なぜ9300Kではダメか?
By Ryota Kurata on 2011.12.08
カメラも世代交代してきていて、カラーグレーディングに対する関心も高まってきているように思える。 ここで誰もが出会う疑問、「モニターの色温度は何Kにしたら良いか?」という疑問。 これについて、明確に文章化しておきたい。 基本的に欧米は6500K、日本そして一部のアジアでは9300Kという色温度がSD時代は使われてきた。 しかし、今年の7月からHD時代に突入してほとんど国内ではHDでテレビが視聴されている。 我々はモニターの色温度はどうしたら良いのか? 答えは簡単。 6500Kにすればいい。 その理由はたくさんあるが、ここでは具体的に3つあげておく。 1) ルールだから 今までもBBSなどで書いてきたが、HDTVの放送波は6500Kで視聴される事を前提に放送されている。 ルールで決まっているのだ。 具体的には ARIBのサイトのデジタル放送用受信装置のPDF http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-STD-B21v5_0.pdf この32ページ(PDFでは通しで46ページ)に と書いてある。 この理由一つだけでも、6500KでOKだ。 もし9300Kで観るという事が決められている資料があればぜひ教えて欲しい。 2) 「千と千尋の神隠し」事件に学ぼう ARIBのPDFに関して今まで主張してきたがまだ9300Kという声が聞こえてくる。 慣習的に今まで9300Kでやってきたからなかなか6500Kに変えれない、という事かもしれない。 そういう方々は、「千と千尋」のDVDの件はご存知だろうか? 説明するまでもなく有名なスタジオジブリの作品だが、このWikipediaの5番を読んで欲しい。 千と千尋の神隠し - Wikipedia - 5番へのリンク 簡単に説明すると、9300Kのマスモニで赤い表現を正確に再現したため、視聴者から「赤が強すぎる、映画で観た色と違う」として訴訟にまで発展したという事件である。 ここで注目したいのは、一般家庭のテレビも9300Kという高い色温度では無いということだ。 9300Kのモニターで調整した映像を6500Kで観れば、赤みが増してしまう。 色温度問題を話すと、「でも民生機は9300Kとか、高い色温度でしょ?」と言われるが、この「千と千尋」の例から、一般家庭のテレビもそれほど高い色温度ではないという事が解る。 そして、色にこだわって正確に表現したいと思えば思うほど、9300Kという設定が大きな壁になる。 このような不幸な出来事はもうたくさんだ。 HDTVのルール通り6500Kで作業すれば、このような事件は起きない。 それでいいのだ。 3) 9300Kという色温度は高過ぎる これは根本的な問題だ。SD時代からおかしいと思い続けてきた。 それでもルールだから従ってきたが… カラーメーターで色温度を測った事があるだろうか? もう十年以上、ありとあらゆる光の色温度を測ってきた。 太陽の光、朝日、昼、そして夕方の斜光。晴れた空。曇りの空。 タングステン、蛍光灯。昼白色、昼光色。いろいろな光がある。 しかしなかなか9300Kまで高い色温度はない。思いつくのはマジックアワーの天空の色温度ぐらいだ。 テレビは基本的には真っ暗な環境では見ない。普通は昼なら窓からのフレアーか、夜なら蛍光灯が点いている環境だろう。 3200Kの電球色、昼白色で5000K、昼光色で6500Kぐらい。実際に測るともっと低い数値が出ることもある。 このような環境光の中で、テレビを見ているのだ。 人間の目は、環境光の影響を受けるから、テレビの映像全体が青く転んで見えてしまう… 全体が青く転ぶ。 それじゃ、ダメなんだよ。 いろいろな色を表現したい。 微妙な赤や、黄色。アンバー。 逆に少しだけ青い表現だってしたい。 9300Kという環境光が無い中で、9300Kのモニターなら全ての色が狂ってしまう。 そんな事でいいのか? 映像の色は、そんな適当な事でいいのか? 9300Kという色温度は、不自然なほど高い。高過ぎるのだ。
基準白色 D65とする。